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クワイエットルームにようこそ

第134回芥川賞候補作となった「クワイエットルームにようこそ」を
自らの手で映画化した鬼才・松尾スズキ監督が語る撮影裏話



「精神病院モノというヘビィさに負けたくなかった!」

 佐倉明日香28歳バツイチ、職業フリーライター。ある日、目覚めると女子閉鎖病棟内にある保護室(通称クワイエットルーム)で5点拘束されていた。ナースの説明では、アルコールと睡眠薬の過剰摂取で昏睡状態に陥っているところを、同棲相手に発見されたという。しかも退院するには、担当医師と同棲相手双方の了承が必要と言われ、しぶしぶ入院生活を送るハメに。
 人気劇団「大人計画」を主宰し、劇作家、演出家、俳優としても活躍する松尾スズキが書き下ろし、第134回芥川賞候補作となった小説を自らの手で映画化した「クワイエットルームにようこそ」。内田有紀、宮藤官九郎、蒼井優、大竹しのぶ、妻夫木聡ら豪華キャストがズラリ顔を揃える本作で、絶望のふちに追い込まれた人間の葛藤と再生を独特の世界観で描いた鬼才・松尾スズキ監督にインタビュー。めくるめく松尾ワールドの魅力に迫った!

「もともと精神病のノンフィクションや抗精神病薬の本を読むのが好きだったんです。それで実際に精神病院に入院していた人たちのブログをかなり読んで。そこには、ご飯は何を食べているとか、あんなことがあった、こんなことがあった、それは出来ないと、詳細に書かれているんです。まあ概ね不満が多いんですけど(笑)。そのエピソードをもとに、想像力を膨らませて書いたのが小説『クワイエットルームにようこそ』なんですよ。女子閉鎖病棟を舞台にしたのは、間違えるというリスクはあるけど、想像がつかない分ファンタジックに描けると思ったから」
と振り返った松尾スズキ監督。

 このシリアスでヘビィな題材を、たっぷりのブラックユーモアとポップな映像でつづり異色のガールズ・ムービーに仕立て上げた。
「ブログを読んでいると、シリアスな事だけじゃなく、本人も笑っちゃうような出来事もあるんですよね。見えてる世界が違う人たちが一緒にいれば、どうやったってぎくしゃくしちゃう事が出てくる訳で、それがドラマを生むんですけど。本当は、統合失調症の人とうつ病の人が同じ病棟にいるのはおかしな事だし、当人たちにとっては相当ヘビィな状況なんですね。だけど、違う視点から見るとそれがコミカルに見えたりもする。もちろんギャグも入れてますけど、彼女たちを笑い物にするようなギャグだけは絶対入れちゃいけない、そこは戒めにしていた部分です。あと、どこか可愛げのある映画にしたかったんですよね。精神病院モノというヘビィさに負けたくなかった! あれだけ魅力ある役者さんたちが出ているのだから、ひとりひとりに見どころがあって、どこかチャーミングに見えたらいいなぁとは思ってましたね」



「内田有紀さんにはヘビィなシーンもポップにする、天性のメジャー感があるんです」


 主人公の明日香を演じるのは、久々の映画出演となる内田有紀。今までの明るくて元気なキャラクターを払拭するような演技で、精神のバランスを崩しながらも自覚症状のない女性を演じ切った。
「どうやら彼女が復帰した時に仕事をしたい5人の監督の中のひとりだったそうで(笑)。復帰作に対する前のめり感を感じたんですよね。それが決め手でした。言葉にしづらいのが難ですけど、彼女には天性のメジャー感があるんですよ。そのメジャー感が、ヘビィで重くなりがちな部分を、明るくポップにしてくれているんですよね。そこには助けられました」

 そして、明日香の同棲相手で放送作家の鉄ちゃんを演じるのが宮藤官九郎。実は、小説執筆時から鉄ちゃんのキャラは宮藤がモデルだったのだそう。
「いちばん身近にいる放送作家なのでモデルにしました(笑)。宮藤くんに関しては、いっぱい無茶振りをしました!! でも、ちゃんとやり通してくれました。あと、彼の役は別に必要ないのに歯が汚いんです。本人の歯もまぁまぁ汚いんですが、さらに磨きをかけて汚していますので、お見逃しなく!」

 何より特筆したいのが、親切づらで明日香に近づき超ド級の爆弾を落とす過食症患者・西野に扮した大竹しのぶの怪演ぶり。前作「恋の門」(2004)にも出演している。
「舞台『蛇よ!』(2005)でも一緒にお仕事をしたんですけど、彼女は自分のことを綺麗に見せることが一番じゃないんですね。だから今回も一切モニターを見ていませんでした。拘束期間も3日間と短かったので、大竹さんだけリハーサルをしてなくてぶっつけ本番だったのですが、さすが大女優。はじけきっていましたね」

 ほか、摂食障害の患者ミキに蒼井優が、鉄ちゃんのおバカな子分コモノに妻夫木聡が、冷酷なナースにりょうが扮し、新境地を開拓しているのも見逃せない!
「僕は、出演者たちが今までやってきた役と少しずれた役をやらせるのが好きなんです。そうすると、役者って役者魂に火がつくんですよ。それに、本当はみんな今まで演じたことのない役を演じてみたいんだと思います」


「物事って二面性があるから、あっちから見ればおかしい事でも、こっちから見たらかなしい。そのバックボーンが映画を通して見えてきたらいいな」と明かした松尾スズキ監督。人間へのあふれんばかりの愛が詰まった意欲作「クワイエットルームにようこそ」。ぜひ劇場でご堪能あれ!!




【松尾スズキ監督 プロフィール】
1962年、福岡県北九州市出身。1988年に「大人計画」を旗揚げ。主宰、作・演出兼役者を務める。1997年「ファンキー!〜宇宙は見える所までしかない〜」で第41回岸田國士戯曲賞を受賞。2000年に上演されたミュージカル「キレイ〜神様と待ち合わせした女〜」で第38回ゴールデンアロー賞演劇賞受賞。2004年「恋の門」で映画監督デビューを果たし、ベネチア映画祭では国際批評家週間部門に出品、話題を集める。以後「female フィーメイル『夜の舌先』」(2005)、「ユメ十夜『第六夜』」(2007)と短編を監督。「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(2007)では脚本を担当した。また、現在公開中の「ヒートアイランド」や「自虐の詩」(10月27日(土)公開)に出演するなど、俳優としても活躍するほか、テレビ番組「世界ウルルン滞在記ルネサンス」でナレーションを担当。幅広い活躍で多忙な毎日を送っている。彼が演出する舞台「キャバレー」が名古屋、大阪の順で上演予定


【STAFF&CAST】
監督・原作・脚本:松尾スズキ 音楽:門司肇 歌:LOVES. 出演:内田有紀 宮藤官九郎 蒼井優 りょう 妻夫木聡 大竹しのぶ 中村優子 高橋真唯 馬渕英俚可 筒井真理子(2007アスミック・エース)118分
■10月20日(土)より、シネマライズ、シネカノン有楽町2丁目、センチュリーシネマほかで公開


(C)2007「クワイエットルームにようこそ」フィルムパートナーズ



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